2018.01.01

 硫黄山の麓には、イソツツジやガンコウラン、ハイマツなどの高山性植物が生育し、群落が広がっています。土は硫黄山の影響を受け、土砂や礫(れき)の堆積物が多く、栄養が少なく乾燥した大地です。

 6月の日差しは強く、硫黄山の噴気と地熱で一層暑さが増し、乾いた風が渡っていきます。イソツツジは、白く小さい花が30から100くらい集まる球形。開花は6月から7月にかけてゆっくり進みますが、初めに、硫黄山周辺の地温が高い場所から咲き、次第に川湯温泉側に広がっていきます。

 イソツツジ群落の中心部には高木などが少なく、イソツツジの個体は低く寄り添うように同じような高さに成長します。それは、極寒の季節に葉や枝に寒風が当たらないよう、積雪によって身を守るためと考えられています。一方、ハイマツや森の周辺のイソツツジは、群落の中心部と比較して3倍近い高さになり、花も一回り大きなものを見ることができます。同じ群落の中で、それぞれの環境に合わせた生き方を見ることができます。

 ハイマツの多くは森林限界の標高の高い所に生育しますが、硫黄山の麓の標高は160mほどで、日本一低いところに群落が広がっています。近年はハイマツが増えてイソツツジが後退しているといわれていますが、植物の世界も常に生存競争が繰り広げられているので、これからの変化をゆっくり見守っていきたいものです。

 硫黄山からの堆積物や火山活動による地熱など、砂漠のような大地ですが、イソツツジはこの厳しい環境にも柔軟に適応し、花を咲かせる屈強な植物なのです。

てしかが郷土研究会(藤江)