2018.01.01

 今のように近代的な設備を施したホテルや旅館とは違って、それ以前の旅館の客部屋の暖房は薪(まき)ストーブでした。

 旅館の裏玄関の周りには薪が塀のように積み上げられていて、そこから客部屋に番頭さんが一晩分の薪を運び、迎える準備をします。お客さんが旅館に到着すると、仲居さんは詰め所の薪ストーブの中から薪が燃えてできた熾き(おき)を“台十能”に移し入れ、お客さんを部屋まで案内します。この熾きを部屋のストーブの中に入れ薪をくべると、高温になっている熾きからは素早く薪に火がつきます。

 薪がパチパチとはぜる音と香りと温もり、土地のお菓子とお茶は、長い間乗り物に揺られてきた旅行客にはホッとする時間を感じさせたことでしょう。

※当時の旅館では“台十”とも呼んでいました。

てしかが郷土研究会(松橋)