2018.01.01

 チセの中央に位置している「炉」の薪が赤々と燃え、祭司・日川善次郎さんの祝詞が始まります。謙虚に謙虚に遠慮しながら神々への感謝と願い事。善次郎さんの祝詞は、一つ一つの言葉をはっきりと述べ、抑揚をつけ、美しい言葉でリズムを刻みます。アイヌ語の意味が理解できずとも、自然に感動を覚え、いつの間にかその世界に引き込まれていきます。

 神々への願いを静かに終えると、歌名人・キヨさんが奏でる歌に合わせ輪舞が始まり、男も女も、子どもたちや招かれた客人もみんな輪の中。エイホー!エイホー!チセの中は神々と遊ぶ大劇場です。

 1977(昭和52)年、日川さんは、この地にチセを自力で建設。1978(昭和53)年に行われた熊送りの儀式や、シマフクロウ、北キツネなどの祭事、日常の神事も、このチセが中心でした。1982(昭和57)年に完成した屈斜路アイヌ民俗資料館の誘致にも、このチセの存在が大きな決め手になりました。1988(昭和63)年、強風で倒壊したチセを再び自力で建設。

 日川善次郎さん 1990(平成2)年 79歳

 日川 キヨさん 2012年 94歳

 お二人の旅立ち後、息子の清さんが受け継ぎ、老朽化したチセの未来を行政側としっかり話し合い、熟考の上で解体を決意。本年6月に姿を消しました。かやぶきのチセは、アイヌ文化の象徴として今日まで屈斜路湖コタンで威風堂々。

永い間お疲れさまでした。

そしてありがとう。

てしかが郷土研究会(充洋)