2018.01.01

 屈斜路コタンには「(屈斜路湖には)昔、大アメマスが住んでいて、湖を渡る舟があると波を起こして覆して、人々を困らせていた。あるとき、アイヌの英雄が銛(もり)を持って退治に来て、近くの山にくくりつけたが、大暴れしてくくりつけた山が抜け、その下敷きになった。それが中島になり、ときどき地震が起こるのも、山の下になったアメマスがまだ死に切れずに暴れるから…(※1)」という、アイヌの古老が伝える伝説があります。

 1938(昭和13)年5月29日、屈斜路湖底噴火大地震が起き、亀裂や山崩れ、陥没などの地殻変動が起きました。湖底からは強酸性の水が湧き出し、屈斜路湖の水が酸性化し、魚が絶滅に近い状態になったのです。

 この地震のことを忘れかけた70年後の今年2008年10月、北海道大学大学院理学研究院と北海道立地質研究所が「屈斜路活断層」といわれる断層の調査を行いました。地層の年代やズレの大きさなどを詳しく測り、断層の過去の履歴や地層と断層の関係を研究するそうです。

 この地域の「大アメマス」の言い伝えからは、伝説が伝え聞かせられてきたこと、そして人々の記憶に残る年月のうちに繰り返し地震が起きていたことが想像できます。

 

※1『アイヌ伝説集』更科源蔵編「屈斜路湖の中島と大アメマス−弟子屈町屈斜路・弟子カムイマ老伝」から筆者が要約した。

てしかが郷土研究会(松橋)