2018.01.01

 今では街に行くとドラッグストアがあり、日用雑貨、食料品、お酒までが売っていて、何を買いに来たのか一瞬考えてしまいます。

 医者が近くにいない開拓時代、体調が思わしくなかったり小さなケガなどは、 アイヌの人たちが教えてくれた薬草を使ったり、習い覚えた民間療法が救いでした。

 人間が住めばいち早く来るカラスやスズメがまだ来ない開拓地の片隅に、最初に来てくれるのは本州(ないち)の富山から行李(こうり)を背負ってくる売薬屋さんです。売薬屋さんが置いていく小さな箱には、風邪薬や腹痛の薬が入っていて、年に一度か二度、薬の入れ替えに来てくれました。

 大人たちは忙しい開墾の手を止めて、売薬屋さんが話す故郷本州のことや道内各地の様子に聞き入っていました。近くの街に宿もない所では開拓者の家に泊まっていき、毎年来る売薬屋さんとはまるで親せきのような仲でした。

 子どもたちは、売薬屋さんが置いていってくれる玩具を今か今かと楽しみにしていました。玩具といっても、売薬屋さんの家族が手づくりした物でしたが、周りは木や草花、虫や獣だらけで、文化の香りのするものが何もない開墾地では「紙風船」ひとつでも、寂しさを紛らわす大切な遊び玩具だったのです。

てしかが郷土研究会(松橋)